中年夫婦の35日間オーストラリア旅行記

こぼれ話

 

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もう一つの鉄道(サトウキビ鉄道)

ケアンズからバスでブリスベンに向かう途中、ハイウェイに並行して走る線路を見た。
最初は普通の鉄道の線路だろうと思っていたが、どう見ても線路の幅が狭く感じる。1メートルもない感じなのである。その線路が道路を斜めに横切っている踏み切りもあったが、やはりその線路の幅員は数10センチしかない。いわゆるトロッコの線路なのである。

何時間か走ったところで、その線路を籠のような貨車の長い列がディーゼル機関車に引かれて行くのを見ることができた。貨車に積まれているのはサトウキビ。確かに、この沿線にはサトウキビ畑が延々と続く。なるほどこの列車は、サトウキビ畑から製糖工場へキビを運ぶ鉄道だったのだ。それにしてもこの鉄道の延長は長い。朝ケアンズを出てから暗くなるまで、ハイウェイの右に左にと延々と見えていた。
子供の頃、サトウキビは大分の田舎でも植えていたので、よくかじったことがある。沖縄でかなり大きなサトウキビ畑を見たこともあるが、さすがにここオーストラリアでは、スケールの違いを感じる。

帰ってきてから調べてみたら、この鉄道の総延長はクイーンズランド州で4000kmにも及ぶそうである。折角だから、この『サトウキビ鉄道』についてご紹介しておこうと思う。

サトウキビ作付地帯 ◆世界第2位の砂糖生産国

オーストラリアはブラジルに次ぐ世界第2位の砂糖生産国で、サトウキビの作付け面積は約41万ヘクタール。年間約490万トン(数字はいずれも98/99年度)の粗糖が生産され、その95%がここクイーンズランドで作られる。
サトウキビ畑はほとんどが南太平洋沿岸に沿って分布しており、その作付エリアには、現在23の製糖工場が、南のナンバー Nambour から北のモスマン Mossman まで、1750kmにわたって点在する。

クイーンズランド産の約8割は輸出用(他州はほとんどが国内消費用)で、砂糖産業のクイーンズランド州経済に占める地位は大きい。日本には年間60万トン程度の粗糖が輸出されていて、アメリカに次ぐ第2位の輸出先となっている。

◆大動脈はミニ鉄道

これら23の製糖工場と周囲のサトウキビ畑をつなぐのが、ナロウ・ゲージ(610mm(2ft)ゲージと1067mm(3ft6inch)ゲージ)のミニ鉄道、サトウキビ鉄道 Cane Railway (しばしば "tramway" とも呼ばれる。)である。
この鉄道の役割は、収穫された新鮮なサトウキビを、加工のためにできるだけ早く製糖工場に運ぶことで、できれば刈り取ってから12〜18時間以内、遅くとも24時間以内には工場に届けなければならない。最盛期には毎日24時間休みなしに稼動している。
クイーンズランド州における線路の延長は約4000km(うち本線は約3000km)あり、年間26週間の収穫期(通常6,7月から11,12月)には、約3千6百万トンのサトウキビを運ぶ。(私が見たのは、ちょうど収穫期が始まったばかりの頃だったのだ。)
現在250台のディーゼル機関車と約52000台の貨車が稼動中で、切り倒されたサトウキビをせっせと工場に運んでいる。

◆コンピュータによる運行管理

鉄道の運行は基本的には大変シンプルである。
各機関車は製糖工場の空車ヤードから大きな籠の付いた空の貨車 "bins" をかき集め、鉄道沿線にある荷積所にそれらを配る。荷積所には待機線があって、貨車は生産者や集荷業者によって貨車が満たされるまで待機する。
帰りには、機関車がいくつもの荷積所からサトウキビが満載された貨車を拾い集めて、製糖工場まで引っ張っていく。貨車は計量所を通って積荷が計量され、荷降場でサトウキビがひっくり返され加工工程へと進む。空になった貨車は空車ヤードに進み、また同じことが繰り返される。

1トンの粗糖を製造するには約8トンのサトウキビが必要。収穫のほとんどは日中行なわれるが、24時間稼動している製糖工場にいかに円滑に材料を供給するかが、この鉄道の役割であり、機関車の運転要員は1日8時間の3シフト制で働くことになる。
それぞれの工場では、運行管理者がいくつもの荷積所への貨車の配車の責任を負っていて、機関車を最大限に活用しサトウキビが最も効率的に工場に貯蔵されるように、コンピューターによるスケジュール管理が行なわれている。

◆小さくても力持ち

機関車は520キロワット・パワーのものが使われ、ほとんどは2ft・ゲージと3ft6inchゲージのどちらにも使える。荷積所から工場までの平均輸送距離は35kmくらいだが、最長では119kmになるところもある。
列車は時速40kmで走り、1編成で重さで2000トン、長さでは1kmになるものもある。
クイーンズランド、ニュー・サウス・ウェールズ、西オーストラリアの数カ所の工場では、鉄道を持たず道路輸送に頼っているところもあるそうだが、現在では、生産量の多いところでは鉄道の方が経済的であると言われている。

一昔前まで使われいた右上の写真のようなかわいい蒸気機関車が、工場を訪れる見学者を乗せて走っているところもあるそうだ。